絵本で育む子どもの感情理解:読み聞かせで共感を深める具体的な声かけ
共働きで忙しい日々の中、お子さまの共感力を育むための時間を確保することや、具体的にどのように接すれば良いのかと悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。特に、お子さまが自分の感情をうまく表現できなかったり、他者の感情に気づきにくいと感じる場面では、どのようにサポートすべきか迷うこともあるでしょう。
「親子のための共感ラボ」では、絵本や日常の体験を豊かに活用することで、お子さまの共感力を自然に育むお手伝いをしています。本記事では、多忙な親御さまでも、日々の絵本の読み聞かせの時間を少しだけ工夫することで、お子さまの感情理解と共感力を深める具体的な声かけのアイデアをご紹介します。
絵本の読み聞かせが共感力育成に有効な理由
絵本は、子どもたちが多様な登場人物の感情や行動、物語の展開を通じて、現実世界では経験し得ない状況を安全に体験できる素晴らしいツールです。物語に触れることは、他者の視点に立つ練習になり、共感力を育む上で非常に価値のある機会となります。読み聞かせの際に親御さまが適切な声かけをすることで、その効果をさらに高めることができます。
【実践アイデア1】感情の「気づき」を促す声かけ
お子さまが物語の登場人物の感情に気づくことは、共感の第一歩です。読み聞かせの最中や読み終えた後に、物語の内容に合わせて以下のような声かけを試してみてください。
- 「この子、どんな気持ちだと思う?」
- 登場人物の表情や行動に注目させ、その背景にある感情を想像させます。特に、表情が豊かなキャラクターのページで有効です。
- 「〇〇ちゃん(お子さまの名前)は、こんな時どんな気持ちになるかな?」
- 物語の世界と自分を重ね合わせることで、登場人物の感情を「自分ごと」として捉えるきっかけになります。
【年齢別のヒント】 * 2~3歳児: まだ抽象的な感情の理解が難しいため、「悲しい」「嬉しい」「怒っている」といった基本的な感情を、絵の具体的な様子(「涙が出ているから悲しいね」)と結びつけて声かけすると良いでしょう。 * 4~5歳児: 少しずつ複雑な感情(「恥ずかしい」「心配」など)も理解できるようになります。「どうしてそう思うの?」と理由を尋ねることで、思考を促します。
【実践アイデア2】感情の「理解」を深める声かけ
感情に気づいた後、その感情がなぜ生じたのか、その感情にはどのような意味があるのかを理解することは、共感力をさらに深めます。
- 「どうしてこの子は悲しい(嬉しい)のかな?」
- 物語の状況や登場人物の過去の行動と感情との因果関係を考えさせます。物語全体を理解する力も育みます。
- 「もし〇〇ちゃんがこの子の立場だったら、どうする?」
- 登場人物の視点に立ち、具体的な行動を想像することで、感情だけでなく行動の選択についても考えさせます。
【実践アイデア3】行動と感情のつながりを考える声かけ
他者への共感は、自分の行動が相手にどのような影響を与えるかを理解することにもつながります。絵本の中の出来事を応用して、現実世界での行動を考えるきっかけを提供します。
- 「こんなことをされたら、相手はどんな気持ちになると思う?」
- 物語の中で、ある登場人物が別の登場人物に何かをした際に問いかけることで、行動が他者に与える影響を意識させます。
- 「この子は、どうしたらもっと良い気持ちになれるかな?」
- 問題解決の視点から、他者の感情に寄り添う行動を具体的に考えさせます。
日常の何気ない瞬間に共感力を育むヒント
絵本の時間だけでなく、日常生活の中にも共感力を育む機会は豊富にあります。
- ぬいぐるみやキャラクターへの声かけ:
- 「このクマさんは、今どんな気持ちだろうね?」と、お子さまのお気に入りのぬいぐるみやテレビのキャラクターについて話すことも、共感の練習になります。
- 公園での出来事:
- 他のお子さまが転んだ時や、友達と楽しそうに遊んでいる時など、「あの子、今どんな気持ちかな?」と優しく問いかけることで、周囲への関心を深めます。
- 親御さま自身の感情を伝える:
- 「ママ(パパ)は、〇〇ちゃんが手伝ってくれて嬉しいよ」「今、ちょっと疲れてるんだ」など、ご自身の感情を言葉で伝えることで、お子さまは感情表現のモデルを学びます。
まとめ:小さな声かけが心の成長を育む
多忙な日々の中で、毎日長時間読み聞かせをすることは難しいかもしれません。しかし、たとえ1冊の絵本であっても、ご紹介したような少しの声かけを意識するだけで、お子さまの感情理解と共感力は確実に育まれていきます。完璧を目指す必要はありません。お子さまとの温かいコミュニケーションを大切にし、絵本の世界を通じて共に心の成長を楽しむことが何よりも大切です。今日からでも、ぜひ一つ試してみてはいかがでしょうか。